頸動脈狭窄症
脳梗塞の原因のひとつ
頸動脈狭窄症とは...
頸動脈は心臓から脳へ大量の血液を供給する主要な血管です。その頸動脈が細くなる、頸動脈狭窄症が近年増加傾向にあります。
脳梗塞は脳の血管がつまって起こる病気で、脳卒中の中でも最も多いことが知られています。頸動脈狭窄症は脳梗塞になる原因のひとつであり、以前は欧米人に多い疾患とされていましたが、近年、食生活の欧米化により増加しています。高血圧・糖尿病・高脂血症など生活習慣病によって起こる動脈硬化が主な原因となります。
こんな症状があったら...
頸動脈狭窄症の疑い...
次のような症状があり、頸動脈の検査を受けられたことのない方は注意が必要です。
外来での超音波検査やMRI・MRAの検査をお勧めします。
・ | 最近、一時的な麻痺やしびれがあったが、すぐ改善した。(多くは数時間以内) | |
・ | 最近、どちらかの眼が急に見えにくい、真ん中が黒くなる、または全く見えなくなったがすぐに(多くは数分以内)で改善した。 | |
・ | 最近、急に呂律が廻らなくなったり、言葉がうまく出にくくなったが、一時的で回復した。 | |
・ | 過去に何回か繰り返して、脳梗塞の発作を起こしている。 | |
・ | 高血圧・糖尿病・高脂血症(コレステロールや中性脂肪が高い)・心筋梗塞・狭心症・下肢の閉塞性動脈硬化症・肥満・喫煙歴などの動脈硬化の危険因子を複数もっている。 |
スクリーニングから精査まで
頸動脈の検査...
超音波検査(頸動脈エコー)
頸動脈エコーは超音波(エコー、ドップラー)を使い、簡便で痛みなどがなく、視覚的に動脈硬化の診断が可能な検査です。脳梗塞など脳血管疾患に対するリスク評価に利用できます。
頸動脈の閉塞・狭窄の発見に加え、大まかな狭窄率や、狭窄の形状、狭窄部分を通過する血液の流速(速いほど狭窄が強い)、内膜が厚くなった程度、プラークの性状(柔らかさなど)が判定できます。
ただし、石灰化といって血管の壁が石のように固くなっている場合は、正確な判断ができないことがあります。
頸部MRI・MRA
MRI装置を使用して、大動脈から頸動脈までの血管を3次元的に撮影する頚部MRAは狭窄の有無、形状を診断することができます。CT検査頸動脈エコーと合わせスクリーニング検査として、また過観察の検査に用いられます。欠点として遅い血流や乱流により信号の低下がおこり狭窄を過大評価することがあるので注意がひつようである。また、頚部MRI撮像にBlack Blood法と呼ばれるプラークの性状(ソフト or ハード)を観察する撮像法があります。術前にプラーク性状を把握することで、プラークの治療法の選択や適応の決定に有用な情報を提供してくれます。
CT-Angiography
点滴内に造影剤というX線を通しにくい薬を注入しながらCTを撮影することにより、任意の血管を立体的に撮影する3D-CTAが撮影できます。 もともとCTに関しては石灰化に非常に鋭敏なので、その程度を見るとともに、頸動脈狭窄度を見ます。 骨の情報も併せてることで、外科的手術であるCEA(内膜剥離術)を行う上において術野の指標となる脊椎との立体的位置関係も見ることが可能で、術前・術後の評価に有用です。 また、術前には全身状態を把握するために冠動脈(心臓の血管)や体幹の血管を撮影する場合があり、その場合に3D-CTAが用いられます。 |
血管造影検査:DSA
治療を選択する場合は、血管造影検査:DSAを行います。 DSAはカテーテルという管を血管の中に進め、X線を透過しない造影剤というお薬を使用して血管の形状・狭窄度および血行動態を調べます。MRAやCTAに比べ侵襲的な検査となりますが治療を行っていく上で有用な情報を得ることができます。 |
3つの治療法
狭窄に対する治療...
・内科的治療
・外科的治療・・・頸動脈内膜剥離術(CEA)
・血管内治療・・・頸動脈ステント留置術(CAS)
禁煙、運動・食事療法に加え、高血圧・高脂血症・糖尿病に対する薬による内科的治療が基本となります。さらに、血液を固まりにくくする抗血小板療法の薬を脳梗塞の予防のために追加することもあります。基本的に内科的治療で脳梗塞の予防を行いますが、頸動脈の狭さが強い場合や潰瘍などの形成がある場合は薬による治療だけよりも、手術を行って狭い部分を改善させることが良いとされています。
手術には、頸動脈を開いて直接動脈硬化の塊を取り除く頸動脈内膜剥離術(CEA)と血管の中からカテーテルを使って狭い部分を広げる頸動脈形成術やステント留置術とがあります。動脈硬化の状態や血管の状態、患者さまの全身状態や患者さまの希望により手術方法を決定します。