大西脳外科クリニック

大西脳外科クリニック

O's News 2026年4月 第255号

三叉神経痛に対する低侵襲神経減圧手術について

三叉神経痛は、顔面に突然、電撃が走るような激しい痛みが生じる病気です。洗顔、歯磨き、食事、会話といった日常のささいな動作が引き金となり、患者さんの生活の質(QOL)を著しく低下させることがあります。

多くの場合、まずは薬物療法(カルバマゼピン(商品名:テグレトール)など)で痛みのコントロールを試みます。しかし、効果が不十分になったり、眠気やふらつきといった副作用で使用継続が難しくなったりする場合には、根本的な治療法として手術が有効な選択肢となります。





脳腫瘍・頭蓋底外科センター長  
髙橋 賢吉

当院の「顔の痛みとけいれんの専門外来」と手術実績の増加

当院では、三叉神経痛や顔面けいれんの診断・治療に特化した「顔の痛みとけいれんの専門外来」を2023年より開設いたしました。
専門外来の開始以降、ご相談いただく患者様が増加しており、手術件数も増えています
2024年には年間10例
の三叉神経痛手術を行いました。

過去5年間で、髙橋医師が執刀医として担当した三叉神経痛の手術は累計で24例にのぼります。

  • 患者さんの背景: 手術を受けられた方の平均年齢は59歳で、58%が女性でした。
  • 主な症状と経緯: ほぼ全ての患者さんが頬(ほほ)や上顎(うわあご)に電撃のような激しい痛みを感じておられました。多くの方は、まずテグレトールによる内服治療を開始されましたが、薬の効果が薄れたり、副作用が強くなったりしたため、手術を決断されています。発症から手術までの期間は平均で38ヶ月(約32ヶ月)でした。
  • 痛みの原因: 手術で確認したところ、1例を除いた96の患者さんで、脳内の「上小脳動脈(じょうしょうのうどうみゃく)」という血管が三叉神経を圧迫していることが痛みの直接的な原因でした。




当院の手術方法:より負担の少ない低侵襲手術へ

当院で行う手術は、神経を圧迫している血管を移動させて圧迫を解除する方法が基本です。
痛みの原因となっている血管(主に上小脳動脈)を慎重に神経から剥がし、移動させて圧迫を取り除きます(1例を除くほぼ全例で実施)。

さらに、患者さんへの負担をより少なくするため、2024年からは、より小さな傷で行う低侵襲手術を導入しています。具体的には、耳の後ろの皮膚切開を約4cmにとどめ、頭蓋骨に開ける穴も直径約2cmのキーホール(鍵穴)と呼ばれる小さなものにする手法です。これにより、従来法に比べて筋肉や骨へのダメージを最小限に抑えることができます。

この低侵襲手術の導入により、手術時間も大幅に短縮されました。従来(2023年まで)の平均手術時間218分(約3時間40分)に対し、低侵襲手術では平均121分(約2時間)と、約44%の時間短縮を実現しており、患者さんの体への負担軽減と早期回復につながっています。




手術の効果と安全性について

  • 痛みの改善: 低侵襲手術により、現在では約2時間の手術約1週間の入院で治療が可能です。96%の患者様で術後に痛みの消失が得られております。
  • 合併症・リスク: 安全性には最大限配慮しておりますが、全ての手術にはリスクが伴います。過去5年間(24例中)の実績では、術後に聴力障害(聞こえにくさ)をきたした方が1例、術後の髄液漏(脳脊髄液が傷から漏れる状態)により、漏れを止めるための再手術を要した方が2例おられました。
  • 再発について: 手術により多くの方で痛みは消失しますが、まれに時間が経ってから痛みが再発することもあります。過去の症例では、2例(約8%)で術後半年ほどで痛みが再発し、追加の麻酔治療(神経ブロック注射)を行いました。





ご相談ください

三叉神経痛のつらい痛みでお悩みの方、内服治療の効果が乏しいと感じている方、薬の量が増えたり副作用にご負担を感じたりしている方で、手術治療をご検討されている場合は、ぜひ一度、当院の「顔の痛みとけいれんの専門外来」にご相談ください。
髙橋医師が、患者さん一人ひとりの状態やご希望をお伺いし、手術のメリット・デメリットを含めて最適な治療法をご提案いたします。
まずはお気軽にお問い合わせください。


毎週月曜日の終日 「顔の痛みとけいれんの専門外来」 高橋賢吉



三叉神経痛手術の手術時間(分)