顔面痙攣は、片側の顔の筋肉(目元や口元)がピクピクと痙攣する病気で、この痙攣が頻繁に起こるようになると日常生活に支障をきたします。原因は、小脳の動脈が顔面神経を圧迫することにより痙攣が生じる病気ですが、多くの場合、薬物療法やボトックス注射(筋肉を麻痺させる注射)では効果が不十分であったり、3ヶ月毎に注射をし続ける必要があり、根本的な治療法として手術が有効な選択肢となります。
「顔の痛みとけいれんの専門外来」と手術実績の増加
当院では、三叉神経痛や顔面けいれんの診断・治療に特化した「顔の痛みとけいれんの専門外来」を2023年より開設いたしました。専門外来の開始以降、ご相談いただく患者様が増加しており、手術件数も増えています。2024年には年間17例の微小神経血管減圧手術を行いました。手術を受けられた方の平均年齢は52歳で、69%が女性でした。76%の患者様は、明石市外(淡路市、姫路市、神戸市等)から来られています。多くの方は、内服治療は効果がなく、20%程度の方はボトックス注射も試されましたが効果が乏しいため、手術を決断されています。
脳神経外科部長 脳腫瘍・頭蓋底外科センター長
髙橋 賢吉
手術方法:より負担の少ない低侵襲手術へ
当院で行う手術は、神経を圧迫している血管を移動させて圧迫を解除する方法が基本です。痛みの原因となっている血管(主に小脳動脈)を慎重に神経から剥がし、移動させて圧迫を取り除きます。穿通枝と呼ばれる細い血管が妨げとなり移動できない場合には、神経と血管の間にクッションを挟んで減圧を行います。
患者さんへの負担をより少なくするため、2024年からは、より小さな傷で行う低侵襲手術を導入しています。具体的には、頭蓋骨に開ける穴を直径約2cmのキーホール(鍵穴)と呼ばれる小さなものにする手法です。これにより、従来法に比べて筋肉や骨へのダメージを最小限に抑えることができます。
この低侵襲手術の導入により、手術時間も大幅に短縮されました。従来(2023年まで)の平均手術時間218分(約3時間40分)に対し、低侵襲手術では平均114分(約2時間)と、約48%の時間短縮を実現しており、患者さんの体への負担軽減と早期回復につながっています。
手術の治療成績
低侵襲手術により、現在では約2時間の手術と約1週間の入院で治療が可能です。93%の患者様で術後に痙攣の消失が得られております。安全性には最大限配慮しておりますが、全ての手術にはリスクが伴います。過去5年間(26例中)の実績では、術後に聴力障害(聞こえにくさ)をきたした方が1例、軽度の顔面麻痺が1例、感染により再手術を要した方が1例おられました。手術により92%の患者さんの痙攣が術後に消失しましたが、再発をきたした方はおられません。
ご相談ください
片側顔面のつらいけいれんでお悩みの方、内服治療やボトックス注射の効果が乏しいと感じている方で、手術治療をご検討されている場合は、ぜひ一度、当院の「顔の痛みとけいれんの専門外来」にご相談ください。 患者さん一人ひとりの状態やご希望をお伺いし、手術のメリット・デメリットを含めて最適な治療法をご提案いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
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| 顔面けいれんの手術時間(分) | 手術による痙攣の改善効果 |
毎週月曜日の終日 「顔の痛みとけいれんの専門外来」 高橋賢吉
*受付で専門外来受診希望とお伝え頂ければ、予約なしで診察いたします。