大西脳外科クリニック

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O's News 2025年5月 第244号

若年頭痛にもご用心、椎骨動脈解離の隠れた恐怖

頭痛は、私たちの日常生活において非常に一般的な症状の一つです。多くの場合、頭痛は過労やストレス、睡眠不足、または軽い風邪によるものだと考えられます。しかし、若年層においても頭痛が単なる日常的な症状として片付けられてしまう場合がありますが、実はその背後に重大な病気が隠れていることがあることをご存じでしょうか?  今回は、若年層の頭痛の背後に潜む可能性のある「椎骨動脈解離」(ついこつどうみゃくかいり)について取り上げ、その危険性と早期発見の重要性を解説します。

理事長・院長 大西宏之

理事長・院長
大西 宏之

椎骨動脈解離とは?

椎骨動脈解離は、脳へ血液を供給する主要な血管の一つである椎骨動脈が損傷を受け、内壁が裂けることによって血流が妨げられる状態です。これにより血栓が形成され、血流が遮断されると脳梗塞を引き起こす可能性が高まります。また瘤状に拡張することがありくも膜下出血の原因になることもあります。一般的には、首をひねったり、スポーツや運動などの強い衝撃を受けたりした際に起こることが多いですが、若年層でも遺伝的要因や生活習慣によって突然発症することがあります。解離は、脳血流に直結する重大な疾患であり、適切な診断と治療が遅れると、深刻な後遺症や最悪の場合、命に関わる危険性を伴います。

椎骨動脈解離の症状

椎骨動脈解離の最も特徴的な症状は、突然の片側頭痛や後頭部の痛みです。特に、痛みが非常に強く、持続的である場合はもちろんですが、軽くても解離しているときがあり、注意が必要です。また、以下のような症状が同時に現れることもあります。

  • めまい:頭痛とともに、バランスを取るのが難しくなる。
  • 吐き気や嘔吐:頭痛に伴う吐き気。
  • 運動麻痺や感覚障害:手足のしびれや力が入らない。
  • 言語障害:言葉が出にくくなる、理解できない。

 

これらの症状が急に発症し、時間が経過するにつれて悪化する場合は、椎骨動脈解離の疑いがあります。特に若年層でこれらの症状が見られた場合、他の原因を考えずに早急に医療機関を受診することが推奨されます。

早期発見が命を守る

椎骨動脈解離は、症状が進行する前に早期に発見し、治療を開始することが非常に重要です。解離が脳梗塞を引き起こす前に、血栓を溶解する薬物や抗凝固療法を用いた治療が有効です。早期の治療により、脳の障害を最小限に抑えることができ、後遺症を避ける可能性が高くなります。
若年層であっても、頭痛やめまい、視力の異常などの症状が突然現れた場合、放置せずに医師に相談することが大切です。また、予防的なアプローチとして、運動中の適切なウォームアップや、日常生活での過度なストレスの管理も効果的です。このような適切な予防策を講じ、異常を感じたら早急に行動することで、大きなリスクを回避することが可能です。頭痛や不調を軽視せず、健康に敏感でいることが命を守る鍵となります。