大西脳外科クリニック

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FUSについて

手のふるえの症状でお困りの方へ

「手がふるえて字がうまくかけない・・・」「食事のときにお箸やコップをうまく持てない・・・」「他人にふるえを見られるのが恥ずかしい・・・」
自分の意志に反して起きてしまうふるえ。ふるえはよく経験する症状です。寒さや緊張など、正常な生理現象によるふるえに加えて、病気が原因となるふるえもあります。その代表的なものが本態性振戦とパーキンソン病です。

本態性振戦は手足や頭、声などの、ふるえのみを症状とする脳神経の病気です。命にかかわる病気ではありませんが、重症化すると日常生活や社会生活に支障がでます。パーキンソン病は、体のスムーズな動きを調整しているドパミンという物質を作る神経細胞が壊れてしまい、ドパミンが減少することで、ふるえや動作緩慢、筋強剛、姿勢保持障害などの運動症状を起こします。

これからご紹介するMRガイド下集束超音波治療(FUS)は、MRI(磁気共鳴画像)と超音波を組み合わせた、メスを使わない外科的治療です。治療についての詳細や、分からないことがありましたら、担当医師にご相談ください。

紹介動画

FUS治療の説明動画

超音波照射のイメージ動画

ふるえの種類

ふるえはよく経験する現象です。ふるえには、人前に出て緊張したときや寒いときなどに出る生理的で正常なふるえもありますが、脳神経や内科の病気が原因のふるえもあります。病気が原因のふるえの場合、治療により症状の改善が期待できます。

生理的振戦

ふるえはよく経験する現象です。ふるえには、人前に出て緊張したときや寒いときなどに出る生理的で正常なふるえもありますが、脳神経や内科の病気が原因のふるえもあります。病気が原因のふるえの場合、治療により症状の改善が期待できます。

甲状腺機能亢進症

甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、ふるえの他、動悸や息切れ、汗をかきやすくなるなどの症状がみられます。バセドウ病が代表的な病気です。

アルコール依存症

お酒の飲み方のコントロールができなくなり、アルコールに対し精神的、身体的に依存してしまうこころの病気です。ふるえの他、汗をかきやすくなる、動悸、睡眠障害、不安感などの症状がみられます。

本態性振戦とパーキンソン病

本態性振戦とパーキンソン病は、ふるえを起こす代表的な脳神経の病気です。本態性振戦はふるえのみを症状とする病気ですが、パーキンソン病はふるえ以外にも、動作がゆっくりになる(動作緩慢)、筋肉が強ばる(筋強剛)、姿勢が不安定になる(姿勢保持障害)などの症状がみられます。ふるえ特徴としては、本態性振戦のふるえが、文字を書く、箸やコップを持つときなど、動作時や姿勢時にみられるのに対し、パーキンソン病のふるえは、じっとしているとき(安静時)にみられます。

本態性振戦とパーキンソン病のふるえ特徴

本態性振戦 パーキンソン病
発症しやすい年齢 中高年に多いが、若い人に起きることもあります 中年に多い
ふるえが起きる部位 手(指先や腕)頭(横に揺れる、声) 手、足、頭
家族歴 ときにあります(家族性振戦ともいいます) ときにあります
ふるえの特徴 動作をしようとする時や、特定の姿勢をとった時にふるえが出ます(速い振戦) 安定している時にふるえが出ます(遅い振戦)
ふるえ以外の症状 ありません 動作がゆっくりになる、筋肉が強張る、姿勢が不安定になる
書字について ふるえで手の動きが大きく乱れるため、文字を書いたり食事をしたりするのは困難です 書いている文字が次第に小さくなります(小字症)
書字について 動作は遅いですが、初期ではふるえは目立ちません
病気の進行 長い年月のうちに少しずつ進行します 少しずつ進行します

本態性振戦とは

ふるえは医学的には振戦と呼ばれ、身体の一部が自分の意志とは関係なく規則的に動いてしまう状態を指します。本態性とは「原因がはっきりしない」という意味の医学用語です。
聞き慣れない病名かもしれませんが、「本態性振戦」は40歳以上の4%、65歳以上の5~14%の人に認められるとの報告もあります。 〈出典:日本神経治療学会「標準的神経治療:本態性振戦」〉
本態性振戦の治療は薬物療法から始め、十分な効果が得られなかったら、手術療法なども考慮します。合併症や副作用なども考慮して治療法を選択していきます。

手の震えのイラスト
本態性振戦の一般的な治療法

ふるえは医学的には振戦と呼ばれ、身体の一部が自分の意志とは関係なく規則的に動いてしまう状態を指します。本態性とは「原因がはっきりしない」という意味の医学用語です。
聞き慣れない病名かもしれませんが、「本態性振戦」は40歳以上の4%、65歳以上の5~14%の人に認められるとの報告もあります。
〈出典:日本神経治療学会「標準的神経治療:本態性振戦」〉
本態性振戦の治療は薬物療法から始め、十分な効果が得られなかったら、手術療法なども考慮します。合併症や副作用なども考慮して治療法を選択していきます。

薬物治療

軽度、中等度の本態性振戦の治療には薬物療法が一般的です。

B遮断薬

軽度、中程度の本態性振戦の治療には薬物療法が一般的です。交感神経の高ぶりを抑えるように作用することでふるえを抑える、β遮断薬のアロチノロールが保険適用となっています。

手術療法

薬物療法で十分に効果が得られない場合や、薬の副作用で服用が困難な場合には手術療法が検討されます。

高周波凝固術(RF)

ふるえの原因となっている異常な神経信号を、脳の視床にある神経回路を熱凝固により壊すことで、ふるえの症状を軽減する治療法です。頭蓋骨に小さな穴をあけて熱凝針を刺入し、治療部位を高周波で熱して凝固します。

脳深部刺激療法(DBS)

ふるえの原因となっている異常な神経信号を、脳の視床にある神経回路へ電気信号を流して異常な神経信号を邪魔することで、ふるえの症状を軽減する治療法です。頭蓋骨に小さな穴を開けて刺激電極、胸にペースメーカのような刺激発生装置を植え込みます。

パーキンソン病とは

中脳の黒質という場所にある、ドパミン神経細胞が減少し、作られるドパミンが減ることで、体の動きをスムーズに制御することが難しくなる原因不明の神経の病気です。パーキンソン病の主な運動症状は、ふるえ(振戦)、動作緩慢、筋強剛、姿勢保持障害です。
ふるえは安静時の振戦が特徴で、座って膝の上に手を置いているときなどに起きます。
患者さんの数は日本国内で約16万人、1000人に1人から1.5人と言われていますが、高齢者に多く、60歳以上では100人に約1人との報告もあります。
〈出典:厚生労働省 平成29年患者調査〉
パーキンソン病の治療は薬物療法が基本ですが、薬物療法で十分な効果が得られない場合には、手術療法が検討されます。合併症や副作用なども考慮して治療法を選択します。

検査のイラスト
パーキンソン病の一般的な治療法

軽度、中等度の本態性振戦の治療には薬物療法が一般的です。

薬物治療

ドパミン神経細胞の減少により少なくなったドパミンをLドパというお薬で補充します。ドパの作用を高めるため、Lドパが脳に届く前にドパミンに変わったり分解されたりするのを防ぐ阻害剤や、ドパミン神経以外に作用するお薬を併用するのが一般的です。

手術療法

薬物療法で十分に効果が得られない場合や、お薬の効いている時間帯が短くなってきた時には手術療法が検討されます。

高周波凝固術(RF)

ふるえの原因となっている異常な神経信号を、脳の視床にある神経回路を熱凝固により壊すことで、ふるえの症状を軽減する治療法です。頭蓋骨に小さな穴をあけて熱凝針を刺入し、治療部位を高周波で熱して凝固します。

脳深部刺激療法(DBS)

ふるえの原因となっている異常な神経信号を、脳の視床にある神経回路へ電気信号を流して異常な神経信号を邪魔することで、ふるえの症状を軽減する治療法です。頭蓋骨に小さな穴を開けて刺激電極、胸にペースメーカのような刺激発生装置を植え込みます。

FUS(MRガイド下集束超音波治療)とは?

超音波発生素子が埋め込まれた治療ヘルメットに患者さんの頭を固定し、ふるえの原因となる神経回路である視床腹側中間核に超音波を集束させ熱凝固します。
超音波は頭蓋骨を貫通するため、従来の手術療法のように頭蓋骨に孔をあける(穿孔する)必要がありません。そのため出血や感染症のリスクは少ないと考えられます。
MRI(磁気共鳴画像装置)を併用するため、治療中にも正確な治療部位と温度が分かります。治療中は患者さんと医師が対話しながら、安全性と効果を確認します。
MRガイド下集束超音波治療は、本態性振戦やパーキンソン病による、手のふるえの症状軽減を目的とする治療法です。病気そのものを治す根治治療ではありません。

FUS(MRガイド下集束超音波治療)の特徴

  • 放射線被ばくがない
  • 穿孔や機器の埋め込みがなく体への負担が少ない
  • MRIでリアルタイムに正確な位置と温度を確認しながら治療を行う
  • 治療中、医師と状況を対話確認しながら超音波照射、効果判定を行う

治療の流れ

  • STEP01

    治療前の検査

    CTスキャンで頭蓋骨の様子を検査します。
    MRIで脳の様子を撮影します。
    医師は治療前にCTの画像とMRIの画像を合わせて熱凝固する位置を決定します。
    医師は治療できるか否かの判定を行います。

  • STEP02

    治療の準備(治療室入室前)

    髪の毛をそりおとします。
    頭を固定し治療の際に位置がずれないようにするフレームという金属の枠を頭に装着します。

  • STEP03

    治療の準備(治療室内)

    治療室に移動し、治療用のテーブルの上に仰向きに横たわります。
    治療は通常3〜4時間程度かかります。
    頭部のフレームと治療用ヘルメットを接続し頭が動かないよう固定します。

  • STEP04

    治療開始

    気分が悪い、違和感があるなどを知らせるためのスイッチを、治療する手とは逆の手に持ちます。MRIの中に入っていきます。
    治療は意識が覚醒した状態で行います。
    ターゲット確定のために30分~1時間かけてさらに精密な脳のMRI画像を撮影します。

  • STEP05

    治療中

    医師は治療中のさまざまな反応を確認します。このために治療は麻酔をせず覚醒したままで行います。
    医師からのさまざまな動作の要望にご対応ください。
    各種のテストを繰り返します。
    ふるえ症状や感覚異常の有無を医師へお伝えください。
    医師はふるえ症状改善と副作用の有無を確認しつづけます。 最適な治療の熱凝固を行う部位を最終決定します。
    徐々にトライアルしながら、凝固の温度を上げながら状態を確認していきます。
    治療用ヘルメットから発する超音波(左図の黄色い線)を、ターゲット部位(数ミリのサイズ)の一か所に集め、ターゲット部位の温度を54~60℃にあげて熱凝固(ゆで卵状態)し、ターゲット部位を治療します。

  • STEP06

    治療終了

    すべての治療プロセスが終わったら、頭部のフレームをはずし、治療効果の確認のため再度MRIで撮影します。
    治療が終わったら病棟に戻ります。
    入院日数については医師と相談してください。

  • STEP07

    退院後

    定期的に外来での診察を受けることとなります。
    スケジュールについては医師と相談してください。

治療に関連するリスクと副作用について

  • まれに筋力が弱まったり、指先が非常に敏感になることがあります。
  • 一時的に歩行が不安定になることがあります。
  • 治療後一時的にうまく力が入らないことがあります。
  • 再発することもあり、医師とよく相談して治療にあたってください。

医師と事前に治療内容、治療方法、治療が受けられない場合の理由等をご相談ください。

治療にかかる費用について

公的医療保険が適用されます

FUS治療(MRガイド下集束超音波治療)は、高額療養費制度の対象となっています。
これは医療費の負担が重くならないよう、一か月に窓口で支払った自己負担額が高額になった場合、上限額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度です。

事前に申請し「限度額適用認定証」を提示することで、窓口でいったん全額を支払うことなく、支払い上限を月ごとの自己負担限度額までとする方法もあります。詳しくは加入している公的医療保険や当院受付窓口にお問い合わせ下さい。

  • 自己負担限度額は、年齢や所得に応じて定められております。
  • 入院時の食事代や差額ベッド代などには適用されません。

難病医療費助成制度(パーキンソン病)

パーキンソン病の患者さんで、ヤール重症度3度以上、生活機能障害度2度以上の方は、難病医療費助成制度の対象になります。この助成を受けるには、都道府県からの指定された医療機関で治療を受ける必要があります。また軽度の患者さんでも高額な医療の継続が必要な場合、特例措置があります。詳しくは加入している公的医療保険や当院受付窓口へお問い合わせ下さい。

よくあるご質問

超音波を照射されている時、熱さや痛みを感じますか?

一時的に熱さや痛みを感じる場合があります。患者さんは手に持ったボタンを押すことで、いつでも超音波の照射を止める事ができます。

超音波が脳のほかの部分に影響を与えることはないですか?

治療では約1000本の超音波を一点に集中させますが、それぞれの超音波は弱いものです。

ふるえの軽減はいつ頃から実感できますか?

治療は各種テストや医師との対話により、ふるえの軽減を確認しながら超音波照射を進め、最適と判断された時点で終了されます。

治療費に保険は適用されますか?

この治療は公的医療保険が適用され、高額療養費制度の対象なっています。また条件を満たすパーキンソン病の患者さんは、難病医療費助成制度の対象となります。

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